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           覇皇伝ストライク・セブン


                0話

               「序章」


「これが……結果だ」
 言葉を、青年は聞いてはいなかった。陽が暮れかけ、赤い夕日が大地を染め尽くす。だ
が、それでも隠しようがない大地を埋め尽くした赤い血の海、そして死体の海を青年は呆
然と見つめていた。
 戦争があった。世界大戦と呼ばれた、長い長い戦争だ。終わることが無いと思われるほ
どに長い戦争の後、青年の前に残されたものは目の前の光景だけだった。
 呻き声もない。
 生き残りなどいない。
 ただあるのは、死体の海だけだった。だが、その死体の異常なこと。あるものは胴を半
分に千切られ、またあるものは心臓だけをえぐり取られ胸に大きな穴を空けていた。
 殺すだけなら、そんなことをする必要はない。
 無意識に、青年は自分の手にした剣の柄を握り締めていた。剣身が紫色の宝石で作られ
た、実用に耐えなさそうな剣だ。だというのに、その剣先からは血が赤い大地へと滴り落
ちていた。
 まるで、剣自体が血を流しているようだ。
 そうぼんやりと思い、青年はようやく自分に声をかけた相手を振り返った。
 同じように、青年だ。黒革の服に身を包み、長大な、やはり刃が紅の宝石で作られた鎌
を持ったざんばらな銀髪の青年。常に笑みが浮かんでいたその口元から笑みが消えている
のを見て取った青年は、銀髪の青年の鋭い銀の瞳に視線を移した。
 前だけを見た瞳だった。
 死体の海に立ってなお輝きを失わない瞳だ。
 それを見ているうちに段々と麻痺していた心が動きだした青年は、相手の名前を震える
唇で紡いだ。
「ガノッサ……」
「戦場に残ったのは俺とお前。どうする、俺たちも殺し合うか」
 青年は目を見開いた。すると、銀髪の青年が唇を歪めて笑った。
「冗談だ」
 剣と鎌。二つの武器からは、止めどなく血が滴り落ち、足元に血溜まりを生み出してい
った。
 銀髪の青年は、鎌をぶんと一振りし、青年に言った。
「世界大戦はこれで終わり、俺たち『ストライク・セブン』も消える。だが、俺はこのス
トライク・セブンを持って次の俺の戦いに向かう。お前はどうする」
「俺は……」
 真っ直ぐな、臆さない銀色の瞳に見つめられ、青年は自分の剣を見た。剣は何も返さな
い。ただ血を流すだけだ。
「人として……生きたい」
「そうか」
 頷き、銀髪の青年は鎌を自分の肩に乗せ、青年に背を向けた。
「お前はお前の好きなように生きろ。俺は俺の好きなように生きる。だが、一つ言ってお
く。もしこの先俺の前にお前が立ちふさがれば──」
 鎌が、肩の上で跳ねた。
「お前を殺す」
 それが、青年と銀髪の青年の別れだった。
 あっさりとした別れだ。
 独り残された青年は、しばらくその場に佇んだ後、頭を横に振って歩き出した。
 別れた仲間とは、反対の方向へと。


 そして、五十年余りの歳月が流れた。


                                                           序終

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