サモンナイト3 レックス×ベルフラウSS 「しあわせなきょう」  青い空に白い雲。場所が変わってもあまり変わらない、空の顔。真っ赤に燃える太陽の 光を受けて、ボクはそよ風にサヤサヤと音を立てる庭木の足元に寝転がる。夏に萌えた芝 生がちょっぴり身体にくすぐったくて、とても良い気分。特等席での昼寝の時間は、最近 覚えた贅沢の一つ。  ボクの名前は、オニビ。前は護人さんたちのいる島に住んでいたんだけど、今はベルフ ラウについてきて、ニンゲンの大きな街で暮らしている。お引越しは二回目で、一回前は ベルフラウがお勉強をする学校の寮で暮らしていた。ここは、ベルフラウのお父さんのお うち。他のおうちには無い大きな庭があって、ボクはとても気に入っている。 「くぅ〜ん」 「ビ?」  まどろんでいるところに声が聞こえて目を開けると、真っ黒で大きな犬が鼻を寄せてき ていた。ボクが来る前から庭にいる子で、このおうちを守る立派な役目を持っている犬だ。 だけど、彼もぽかぽか天気の中でお仕事をする気にはなれないらしく、ボクに目配せをし て「隣いいかな?」と言ってくる。 「ニビビ」 「わん」  場所を少しわけてあげると、犬はすぐに寝そべって、気持ち良さそうな寝息を立て始め た。夜もベルフラウやお父さんのために、泥棒が入らないように聞き耳を立てているから、 きっといつも凄く眠たいんだと思う。おやすみなさい。幸せそうに寝ているのを見ていた ら、ボクもまたうとうとしてきた。  今日はとても良い夢が見れそうだ。見るなら、うん、ベルフラウの夢がいい。  ベルフラウ。ボクの名前をつけてくれた女の子。とっても可愛くて、強くて、勇気があ る子。だけどちょっぴり怒りんぼで、ボクがいたずらをするとすぐに叱ってくる子。ボク とお揃いの真っ赤な着物を着てて、ボクは最初ベルフラウはボクのお母さんなんだと思っ ていた。  ベルフラウと出会ったのは、あの島でのこと。ボクがいじめられていたところを、ベル フラウがやってきて助けてくれたんだ。結局いじめっこを追い払ってくれたのは、ベルフ ラウの先生さんだったけど、ボクは最初に来てくれたベルフラウの格好良さを忘れない。 本当に、本当に格好良かったから。  それから、ボクらは友達になった。一緒に遊んで、一緒に眠った。島には悪い人がたく さんいて、ベルフラウや先生さんと一緒にそんな奴らと戦ったりもした。辛いことがたく さんあって、ベルフラウはいっぱいがんばって、いっぱい泣いていた。ボクも男の子だけ ど少しだけ泣いた。だけど、そんなことを乗り越えて、ボクらは毎日笑って過ごせる今を 手に入れた。  それで、ベルフラウが島を出る時、ボクも島を出た。もともとベルフラウは迷子で島に 来ていたらしくて、学校に通うためにニンゲンの街にボクらは住むことになった。  そこでの毎日は、少し退屈だけど、泣きたいことなんか何もない、とっても穏やかなも のだった。小さかったベルフラウは背もぐんぐん伸びて、おっぱいは大きくならなかった けど、「立派なレディ!」になったみたい。ボクはあんまり大きくならなかったけど、二 人の関係はまったく変わっていない。今日もボクらは一番のお友達。  あ、そうそう。引越しはしたけど、島へはよく戻っている。そこには先生さんが住んで いて、ボクもベルフラウもいつも大好きな先生さんに会える日をとっても楽しみにしてい る。でも、この前は先生さんがこっちのおうちにやって来て、ベルフラウのお父さんにぺ こぺこ頭を下げていた。悪いことをしたのかなぁって思ったんだけど、そうじゃなくて、 「年貢の納め時」だったらしい。  先生さんが年貢を納めてしばらくして、ボクは初めて着物を着た。その日ベルフラウが 着た真っ白い着物とお揃いの、真っ白いマント。先生さんも真っ白で、ボクらは三人で真 っ白な格好をして、ニコニコ笑顔のみんなに手を振った。ベルフラウがぽろぽろ涙を流し て泣いたから、ボクはてっきり悲しいのかと思ったけど、そうじゃなかったみたい。ベル フラウは笑っていた。とても嬉しそうに笑っていた。だから、ボクも嬉しくて笑った。何 故だかボクまでぽろぽろ涙が溢れてきた。嬉しい涙が止まらなかった。  ボクは、ベルフラウに出会わなかったら、どうなっていただろう。一人であの島にいて、 名前も無かったボクは、どんなに寂しかっただろう。そう考えると、嬉しくて嬉しくてた まらなかった。みんなの笑顔に囲まれて、ボクは生まれて初めて笑顔で泣いた。  ベルフラウ、ボクは幸せなんだ。きみに出会えて、本当に幸せなんだ。  うとうとうとうと、気持ち良い気分。起きたまま夢見心地で、ボクはゴロンと一回転。  青い空も、白い雲も、赤い太陽も、全部が全部君がボクにくれた。そんなベルフラウの 夢を、ボクは見よう。  ふさふさと足音。うっすらと目を開けると、出会った時より小さなベルフラウ。 「おひうね?」  舌ったらずなちびフラウ。そうだね、君もいた。さっそく寝っ転がるおちびの枕になっ て、ボクは寝る前にもう一度だけ笑顔を浮かべた。  色々な人に会えたよ。ありがとう、ベルフラウ。  ボクと、犬と、おちびさん。三人並んでお休みなさい。  今日もきっと、素晴らしい一日に違いない。                                了