サモンナイト3 レックス×ベルフラウSS 「未来の行方 〜父が来たれば〜」                 序 「お父様、少しよろしいですか?」 「おや。どうしたね、ベル」  寝室の分厚い樫の扉を二回ノックして顔を見せた愛娘の姿に、帝国随一の大商家である マルティーニ家を束ねる男は思わず口元をほころばせた。  今年で二十一歳になるベルフラウは、マルティーニにとってまさに目に入れても痛くな い可愛い娘だ。帝国随一の格式を誇る軍学校を首席で卒業したことも自慢であれば、その 後軍に入ることなく自分の事業の手伝いをしてくれているのも孝行娘と鼻が高い。さらに、 亡き妻にますます似てきたその面立ち。幼い頃には仕事にかまけて寂しい想いをさせただ けに、惜しみない愛を注いでもまだ足りない相手だ。  座っていた安楽椅子から腰を上げ、遠慮したのかわずかしか開いていない扉の取っ手を 引いて招き入れると、夜半を回っているというのにベルフラウは商会で着ているドレスの ままだった。  もっともそれはマルティーニも同じことで、彼も肩幅の広いスーツの上着とベストを放 り出しただけの姿である。基本的に、この親子は使用人泣かせなほどに夜が遅い。毎夜毎 夜、下手をすれば真夜中と明け方のちょうど境の時間に帰宅する主人を待つ使用人たちを 見かね、ベルフラウが夜中の帰宅時には手伝いはいらないと通達したくらいだ。はっきり 伝えておかないと、優秀な使用人たちは一睡もせずにこの親子を待ち続けるほどだからで ある。 「失礼します」  ともあれ、マルティーニに招かれたベルフラウは、すでに習慣で父の服を拾い上げる。 上等な生地に皺がつかないように丁寧に胸に抱えると、その作業の終わりを見計らってマ ルティーニが先程まで自分が座っていた椅子を勧める。 「どうしたね、こんな時間に。明日の仕事に差し支える」 「それはお父様もでしょう?」  長身で肩幅の広いマルティーニが、その外見に相応しい深みのある低い声で軽く話題を 振ると、ベルフラウは安楽椅子の横にある小机に水差しと一緒に置いてあった書類を手に とって肩をすくめた。  素早く目を通すと、それは<金の派閥>との希少貨物の取引の段取りの書類だ。<金の 派閥>は帝国とは休戦状態にある聖王国に本拠を置いているが、召喚術を積極的に発展の ために使うという理念で帝国とは一致しており、対照的に召喚術を門外不出、真理探求の 術とする<蒼の派閥>とは違い、ある程度の交渉は認められている。  だが、ベルフラウはすぐに書類を机に戻すと父に言う。 「この書類、明日私が作り直しておきますわ。航路が海賊に襲ってくれと言わんばかり。 去年引退したご老体の心配的中ですわね」 「私もそう思っていたところだよ」  仕事を取られてしまった、とマルティーニは苦笑する。長年商会に勤めてくれた貿易の 担当者が、お嬢様がおられるなら安心ですが、と付け加えたことを思い出す。  その含み笑いの余韻のまま、マルティーニはランプに歩み寄って、ズボンのポケットか ら流行の細い紙煙草を取り出した。昔ながらの葉巻よりも、今はこちらを吸う者が増えて いるのだが、そこでマルティーニはベルフラウに確認する。 「煙草を吸っていいかね?」 「ええ、どうぞ」 「すまんな」  レディーの間近で煙草などもっての他というのが帝国流の礼儀だが、そこは家族の気安 さでランプの灯火を先端に宿す。真っ赤に赤熱するそれを一度深く吸ってから、マルティ ーニはなかなか本題を切り出さない娘に、おどけたように首を傾げてみせた。 「それで? わざわざ書類の添削に来たわけでもあるまい。言ってごらん」  その聡く優しい促しに、ベルフラウの顔にわずかにあった躊躇の色が消えていくのが、 光量を絞ったランプの生み出す薄暮の世界の中でわかった。  娘は意を決したのか、言う。 「実は、お父様に会って頂きたい方がいるんです。来月辺りで」 「……ふむ」  来たか、とマルティーニは煙草をくわえながら思った。  娘がかつての家庭教師である赤毛の青年と交際していることは、とうの昔から知ってい る。共通の知人であるために話題にもよく出るし、娘がまとまった休みを取る度に出かけ る先が彼のもとであることも知っていた。 (ついに来たか……)  感慨深く、父は口から白い煙を吐く。見れば、娘はこれ以上無い真剣な瞳で自分の方を 見ていた。それには思わず笑ってしまう。 「なんだね。ああ、構わないよ。誰に会うかはわからないが、断る理由はないさ」  あからさまにホッとするベルフラウの姿に、マルティーニは目を細める。  そうか、と。 (もう、そんな歳か)  ふと、安楽椅子に座るベルフラウに過去の映像が重なる。膝の上にまとめた服が、膨ら んだ腹の丸みにも見えたからかもしれない。  幸せそうに座る、娘に良く似た人。その横に立つ、まだ先代から家を譲り受ける前の自 分。忘れないのは、その光景が絵になり額に入れられて食堂に飾ってあるからだろうか。 (――いや、忘れんよ)  心の中で呟き、マルティーニは父の顔でふむふむと何度も頷く。その冗談めかした仕草 に、ベルフラウは照れ隠しで大きく言って立ち上がる。 「さて! それじゃあ、用件は済んだから、私はもう寝ます。お父様も、もうお若くない んですから夜更かしはほどほどにしてくださいね」 「無論だが、ベル、いいかね」 「なんです?」  振り返る無防備な顔。緊張を抱えて訪れた場所で、目的が簡単に達成して気が抜けた顔。 仕事では決して見せないその隙に、マルティーニは煙草を指で弄びながら言った。 「次の休み、来週だったかな。私と一緒に遠出しないかね?」 「え? ええ……かまいませんけど」  一瞬躊躇い、ベルフラウは頷いた。その躊躇いは、赤毛の青年にことの報告に行く機会 が潰れたと思ったからだろう。だが、今は父親のご機嫌はとっておかないといけないとも 思っているのか、すぐに切り返してくる。 「それで、どこに連れて行ってもらえるんです?」 「そうだな……」  思案するふりだけをして、たっぷりと間を取ってから、マルティーニは言う。 「忘れられた島なんて、どうかね? 一度行ってみたかったんだが」  娘の目が、丸くなった。                 1  はぐれ召喚獣たちの暮らす島――通称『忘れられた島』にその二人がやって来たのは、 終春の雲ひとつ無い青空の中で太陽が真上に差し掛かろうという時間帯だった。  快晴に恵まれた船旅を終え、最近増えた客人のために作られた桟橋のそばに中型船を停 留させたのは、肩幅の広いスーツ姿の紳士、マルティーニだ。後ろに撫で付けた茶金の髪 や、整えられた口髭、フロックコートを羽織って、とどめに軍人の剣に対する商人の象徴 ステッキを手にしているとあれば、まさに完全無欠の正装だ。  それに比べ、後ろにつき従うベルフラウは白生地のチュニックに焦げ茶色を基調とした チェック柄のスカートという簡単さである。しかし、長い蜂蜜色の髪を輝かせる彼女が着 ると、普段着でさえもあたかも貴族の子女にあつらえたものかのように気品に溢れたもの となる。雪のように白い肌と、怜悧な瞳のために一見冷たいとも思われがちな容姿である が、その口元に浮かぶ笑みは温かい。スラリと伸びた足を覆うスカートの裾からは、わず かに黒いタイツの色が覗いている。  そんな二人の頭上には人の頭大の丸い生き物――ベルフラウの護衛獣であるオニビが浮 かんでおり、久しぶりの島にはしゃぐように小さな手を叩き合せている。 「……美しいところだね」 「でしょう? あ、オニビ。先生を呼んできてちょうだい」  海岸と、そして少し内陸に入った場所に広がる鬱蒼たる森を見て感嘆の声を上げるマル ティーニに微笑みを返し、ベルフラウは小さな紙切れをオニビに渡した。護衛獣は了承す ると、高度を上げて森の方へ飛んでいき、すぐに見えなくなる。 「少ししたら先生が来ますが、その間近くなら散歩できますけど?」 「そうだな……娘にエスコートしてもらうのも悪くは無い」  魅力的な提案に、マルティーニは笑顔で頷いた。  マルティーニの忘れられた島訪問の理由は、もちろんベルフラウが心を決めた男である レックスに会うためでもあったが、それ以上にこの場所を見ておきたいということが強か った。娘が辛い戦いを経験し、だというのに今も足しげく通う場所。はぐれ召喚獣たちの 楽園。そこを見てみたかった。  三日後に迎えに来るように言いつけた船が去っていくのを見届け、親子は海岸線に沿っ て歩き出した。入り江の浜で砂に足を取られながら歩いていると、マルティーニが歩きづ らそうにしているのを見かねてベルフラウが手を貸し、二人は手を繋いでしばしの波打ち 際を楽しんだ。  可笑しくなってしまったのは、二人でそのように歩いた思い出というものが無かったた めだ。 「昔……まだお前が七つくらいの時だったが、覚えているかね?」 「もしかして、恥ずかしい話?」  子供の頃の話となるとロクなものではないのでは、と警戒するベルフラウに、マルティ ーニはいやいやと否定する。 「どちらかと言うと、寂しい思い出だよ。二人で海に行った時、お前が転んでね、手を貸 そうとしたが、断られてしまった」 「う……」  思い切りバツの悪い話に、ベルフラウが叱られた子供のように首をすくめた。そのやわ らかい手を包み込み、マルティーニはしみじみと言う。 「この小さな手は、あの頃もっと小さかったのだろうね」 「……あの頃は、お父様に甘えたら駄目って思っていたんです」  ポツリとベルフラウは呟いた。少し驚いたようにマルティーニが見ると、彼女は照れて 頬を染めながら言う。 「甘えたら、お休みが終わったらまた一人になって寂しくなる。そう思っていたんです」  その言葉を吟味し、父はふむと口元を緩める。 「では、嫌われてはいなかったと思って良いのかな?」 「あら、大嫌いな時期はありましたよ、お仕事大好きなお父様?」 「はは……これは強敵だ。まだ根に持っていたらしい」 「当然ですわ。私がひねくれずに育ったのは、ばあやの努力の賜物ですから」 「男勝りではあるがね」  軽快な言葉のやり取りに、親子は同時に吹き出した。それにかぶさるような波の音が耳 に快い。広い砂浜には彼ら親子の歩いた足跡しかついておらず、まるで誰もいない砂漠の 中を進んでいるかのような錯覚があった。  と、ベルフラウが背後を振り返る。 「オニビが先生を連れてきたみたい。……急いじゃってまあ」  後半は独り言だったが、そこに甘く可愛がるような響きを感じ取り、マルティーニはく すぐったさに肩を震わせて笑った。すると、ベルフラウも自分の言葉に気がついたのか、 誤魔化すように父に言う。 「ほ、ほら、先生走ってきてくれたみたいですから、私たちも戻りましょう。お父様は、 お久しぶりですわよね」 「ああ。お前が船で行方不明になった後、本人かどうか確認するためにパスティスで会っ た時以来かな」  約十年ぶりというわけだ。当時二十歳そこそこだった青年が、どれほど立派になってい るだろうと想像し、マルティーニは知らず隣の娘を見下ろしていた。  二十歳そこそことは、つまり今のベルフラウの年齢だ。ベルフラウが歳を重ね、美しく なったように、かの青年も同じだけの歳を重ねている。  歳の差は、埋まらない。  それを承知で二人は交際しているのか、と尋ねるのは野暮な気がして、代わりにマルテ ィーニは尋ねた。 「彼の前まで、手を繋いで行っても良いかね?」 「何を言っているんですか」  クスリと、少女のように娘は笑う。 「当たり前でしょう、お父様?」  その笑顔に、父として恥ずかしくない挨拶をせねば、と決意した。                 ※ 「先生、何よその格好は!」  マルティーニとレックスの約十年ぶりの再会は、ベルフラウの怒声から始まった。呆気 に取られるマルティーニの前で、怒鳴られたレックスは別の意味で呆気に取られて予想し ていなかった人物の姿に目を丸くしていた。 「マルティーニさん……お久しぶりです!」 「おお、レックスくん。はは、君はあまり変わらんな!」  驚きつつも喜びを見せ、頭を下げるレックスに、マルティーニは進み出て彼の手を取っ た。節くれだった豆を何度も潰した硬い手の感触に、彼が農耕を営んでいることがすぐに わかった。  そもそも。 「こんな格好ですみません。こちらに来られると聞いていれば、もっとまともな格好をし てきたんですが」  泥だらけのシャツと足首でくくるモンペという野良着姿では、彼がつい先程まで何をし ていたかわかるというものだ。  だから、マルティーニはことさらに握手した手を上下させて言う。 「いや、かまわんよ。急がせたのは、私の娘だからね」 「あ、あはは……」  さすがにそれには、赤毛の青年も恥ずかしげに笑う。  そこに割り込んだのがベルフラウだ。 「ちょっと、先生……お父様、少し待っていてくださいっ!」  握手する二人を引き離し、レックスの腕を取って少し距離を取った場所で彼に説教を始 める娘に、マルティーニは新鮮なものを感じて思わず見入ってしまった。口調も同格同年 代の相手に対するぞんざいさだ。  漏れ聞こえるのは、 「なんで、よりにもよってそんな格好で来なくてもいいじゃないっ。お父様だからいいけ ど、他の家の親だったら絶対に減点よ!」  だとか。 「ほら、頬に泥。また汗を手で拭ったわね?」  だとかである。  そうした文句ばかりの会話の合間にも、取り出したハンカチでレックスの頬を拭うベル フラウの姿は甲斐甲斐しい。 「まったくもう」  とため息でまとめたのはベルフラウであったが、その短いやり取りでマルティーニは結 論していた。 (これは、恋の蜜にひたっているのはベルの方だな)  父親の前であるというのに積極的にレックスの世話を焼くベルフラウと、マルティーニ の視線を気にして身を硬くしているレックス。  可哀想に、とマルティーニはレックスの立場に同情した。彼が良識人であることをマル ティーニは知っている。父親の前で娘と恋人らしい語らいをするなど、問題外だろう。  案の定、レックスは堪え切れなくなってベルフラウに待つように言い、マルティーニの 前までやってきて再び頭を下げた。 「マルティーニさん。このような場所ですが、集落までご案内する前に少しよろしいでし ょうか」 「ふむ。かまわんよ」 「先生……」  態度を改めたレックスに、マルティーニもやおら顔を真剣にした。ベルフラウが驚いた 顔で呟き、そして両手を重ねて胸に当てる。  彼女が息を呑んで見守る中、レックスは、 「この島のことは以前にもお話しましたが、はぐれ召喚獣たちの島で――っていたぁ!?」 「そんなこと、先に注意してあります!」  島での注意事項を述べようとして、ベルフラウに足を踏まれて悲鳴を上げた。  何かをとても期待していたらしいベルフラウが肩を怒らせて森へ向かっていくのを眺め、 マルティーニも首を傾げるレックスの背中を叩いてそれに続いた。  ホッとしてしまったのは、彼も娘と同じことを考えていたからである。                 2 「なるほど……話には聞いていたが、実際に来てみると想像とは違うね、レックスくん」 「ええ。初めて来られた方は、やはり戸惑うと思います」  森の中をかなり歩き、レックスが居住するというユクレス村に辿り着いたマルティーニ は、その天地二段構えの住宅様相に何度も感心の頷きを繰り返していた。太い樹木が育ま れるメイトルパ独特の樹上住宅からは、幾つもの好奇心の強い瞳がマルティーニに集まっ ている。  一匹でも脅威となるはぐれ召喚獣のこと、並の男であれば怖気づくところであるが、事 情を知っていることと大商人としての持ち前の胆力が彼の足取りをしっかりとしたものに していた。  しかも、軍や帝国上層部と違ってマルティーニには忘れられた島への侵攻の欲が無く、 その価値観の捉え方も今までの不意の来訪者たちとは大きく違っていた。  それは、はぐれ召喚獣たちを『化け物』や『商品』、果ては『実験体』として見てきた 人間たちと違い、彼が『娘の住む場所として相応しいか』という視点を持っているからだ。  そしてその感想は、 「のどかで良さそうなところだね。私も老後はここで過ごしてみたいものだ」 「ははは。歓迎しますよ」 「安請け合いしていたら、ヤッファさんに怒られるわよ」  マルティーニの理解が得られてニコニコと機嫌が良いレックスに、ベルフラウがたしな めるように言った。  やがて、マルティーニを太い木の根元にある一軒の家に案内すると、レックスは紹介し た。 「これが俺の家です。狭いですが、飲み物を出しますのでどうぞ」 「この家は先生が自分で作ったんですのよ、お父様」 「ほう」  まるで自分の手柄のように誇らしげに言うベルフラウに、マルティーニは木材をふんだ んに使ったその家の外装を見遣りつつレックスに招かれた。入った部屋がそのまま家の全 てという竪穴式の家屋で、天井から吊るした布の仕切りで部屋が作られている。天井に穴 があり、梯子がかかっているのは、樹上住宅へと上がるためだろう。 「お掛けください」 「さっきから言おうと思っていたが、そんなに畏まらんでもいい。ここまで来てしまえば、 帝国一の商家も何も関係あるまい?」 「は、はあ……じゃあ、掛けてください」  真面目な青年はコホンと咳払いして、言葉を改めた。それに満足してマルティーニは手 作りの椅子に腰掛けたが、レックスが「ここまで」に二通りの意味をこめたことに気づい ていない様子には肩をすくめた。  飲み物は、レックスが着替える間にベルフラウが用意した水出し茶だった。メイトルパ 産の茶の味は初めてではなかったが、その高い品質にマルティーニは商品価値を考え始め、 すぐに脳裏のそれを打ち払う。  笑ったのはベルフラウだ。 「今、この島と定期便をやり取りしてどのくらいの利益が出るかお考えでしたでしょう?」 「悲しい性だよ。まあ、想像くらい許して欲しいものだね。この楽園のような場所を汚そ うなどとは思わんさ」  商人である以前に一人の父親としてね、と含みを持たせると、着替え終わったレックス が感動の面持ちで仕切りの向こうから戻ってきた。ワイシャツに紺のベスト、そしてスラ ックスという格好は、以前ベルフラウが父に見立ててもらってレックスに贈ったプレゼン トだ。島の生活では着る機会がなかったのだが、なかなか様になっているとマルティーニ は自分の見立ての確かさに頷いた。  チラリと娘を見れば、彼女はようやくレックスがまともな格好になって胸を撫で下ろし ている。レックスはマルティーニの恩人でお気に入りの人物であるが、やはりこれから待 ち受ける『本番』を考えると小細工の一つでも打っておかなければと思っているのでは、 と父親の立場からは思う。  もっとも、この娘は最終的に父親が認めなくても、だったら勝手に結婚しますと家を飛 び出しかねない。 『そんなことになったら、先生が気にするから』  と、そのくらいは言う娘だ。 『家を出て行かれたくなかったら先生を認めておいた方がいいですわよ』  とも言いかねない娘だ。  我が娘ながら逞しい子だと感心するし、優しい子だと愛しくも思う。  何故なら、彼女にとっての結果が同じであれば、それは周りの人のための努力なのだか ら。我が侭だけで走るのではなく、周りごと最高の方向に進ませようという、そういう努 力なのだから。 (……誰に似たのか)  少なくとも、自分や妻ではないだろうと思う。  とにかく、レックスを立派に見せようとがんばっている娘に免じて、マルティーニはひ とことコメントした。 「ふむ、良く似合っている。軍服姿も似合っていたが、君は男前だから何を着ても似合う かもしれないな」 「いえ、そんな……あ、そうそう。お昼、まだですよね? 少し待っていてください。果 物もありますので」  照れて謙遜する青年は、そう言えばと話題を逸らして、南国産の果物の盛られた籠を食 卓の上に置いた。無造作にドンと置かれたことには、さすがにマルティーニも目を丸くし た。視察で農場などを訪れたことはあったが、そういう時でも食べ物を採ったままの籠で 差し出されたことはない。  目を白黒させる父親を尻目に、ベルフラウは甘い香りを漂わせる葡萄の房を取る。ぷち っと実を一つちぎって食べて見せると、マルティーニにも勧めた。 「ここの果物はどれも美味しいですから、安心なさって」 「帝国の第一等にも負けない美味しさですよ。村のみんなで丹精こめて作ったんです」  そこまで言われれば食べないわけにもいかず、マルティーニは自分も葡萄を一つまみ口 に放り込んだ。すると、嫌味にならない程度の甘みと、なめらかな舌触りに思わず無言で もう一口食べてしまう。 「なるほど……まさに本場メイトルパの味というわけだね」  それこそ世界を越えてきた味だ。ザルの中には見たことも無い果物も並んでおり、マル ティーニは年甲斐も無く胸を躍らせてそれらに手を伸ばした。  その間に正装の上にエプロンをしたレックスが台所で調理をはじめ、父は娘に尋ねた。 「ベル、お前は料理はしないのかね?」 「そうですね……お父様がお望みならば。――先生、代わるわ」  だが、その提案を父はすぐに後悔することになった。始めは、流しに立つ娘のエプロン 姿に感慨深いものを感じていたのだが、その娘が包丁を振るった瞬間にその父の幸せは吹 き飛んだ。否、振るうなどというものではない。 「く……こう、よね?」  眉間にぐっと皺を寄せ、ベルフラウはまな板の上の魚に顔を触れんばかりに近づけて包 丁を動かしていた。まるで何かの実験のように慎重に刃を通し、魚の腹を割いていく。ま るで、少しでも気を抜けば魚が逃げかねない、という様子にマルティーニはようやく思い 出した。 (……料理など、習わせたことはなかったな)  多くの家庭教師、乗馬などは学ばせたが、ついぞ料理を学ばせたことはなかった。  そうこうして出来上がった昼食は、魚を脂で揚げたものと各種野菜の盛り合わせだ。危 なっかしい割にはまともなものが並び、父はとりあえずホッと胸を撫で下ろした。  不安が表情に出ていたのか、レックスが苦笑しながら言う。 「時間はかかりますけど、ベル――フラウ、の料理はこっていて楽しいですよ。ほら」  ベル、と言おうとしたのを強引にベルフラウに修正して、レックスは揚げ物用のつけダ レが四種類もあることや、綺麗に盛られたサラダを示す。 「どうぞ、お父様」  ベルフラウのひとことでずいぶん遅れた昼食が始まると、過程はともかくとして味は決 して悪くはないことにマルティーニには合格点を出した。  当然です、とベルフラウは胸を張ったが、そもそも良家の子女である彼女は炊事とは縁 遠い存在だ。軍学校時代に多少習ったにしろ、率先して料理をする機会など、屋敷では一 生無いであろう。  初めて食べる娘の手料理を喜ぶ傍らで、複雑に思う。 「美味しかったよ。これならば、毎日食べたいくらいだ」  持参したナプキンで口を拭き、マルティーニはそう娘に告げた。しかし、娘はそうした 父の牽制をスルリとかわす笑みをしてみせた。 「お屋敷の料理番のお仕事を奪うほど悪い娘ではありませんから」  料理を食べて嫁に出しても安心と思う反面で、屋敷であればそのような苦労はさせない のに、と親心は考えてしまうのである。                 3  島の代表者たちに会ってみたい、とマルティーニが希望すると、レックスは「みんな忙 しいからすぐには無理かもしれませんよ」と前置きをしてから家を出た。  さて、レックスが各人を回ったところ、次のような反応が返ってきた。  キラリと輝いた眼鏡のフレームを押さえて、 「ついに来たのね」  と真剣極まりない顔で呟いたのが、機界ロレイラルの集落『ラトリクス』を治める機械 人アルディラ。  気だるそうに寝転がっていた身を即座に起こして、 「はっ。来やがったか。いいぜ、任せときな」  とバシバシとレックスの肩を叩いたのが、幻獣界メイトルパの集落『ユクレス村』の長 である白虎の亜人ヤッファ。  畳の間に正座して首肯し、 「承知しました。あなたに恥をかかせるわけにはいきませんからね」  と生真面目かつ深刻そうに言ったのが、鬼妖界シルターンの集落『風雷の郷』を守護す る鬼忍キュウマ。  深い森の中、マナに溢れた水晶柱に囲まれて力を補充しながら、 「ベルフラウのお父さん……わかりました、大船に乗ったつもりでいてくださいね」  半透明な身体の胸を叩いて笑顔を見せてくれたのが、霊界サプレスの集落『狭間の領域』 を統率する霊界の騎士ファルゼンこと少女霊ファリエル。  全員から快い承諾を得たレックスが「みんなこの家に来るそうです」とマルティーニに 報告すると、ベルフラウは、 「みんな暇ねえ」  と呆れたが、実際にはそれぞれ重要な仕事を抱えた面々である。自分の父が来たという ことでその仕事に穴を空けてまでやって来てくれるということに、ベルフラウは内心感激 したのだが――。 「レックス、入るぜ」  さっそくやって来たヤッファたちの姿を見るなり、その感激は吹き飛んでた。 「な、な……!?」  ベルフラウが驚いたのは、護人たちが普段の格好からは想像もつかない格好をしていた からだ。  ヤッファはその大柄な身体を白地のスーツに無理矢理押し込み、襟元には蝶ネクタイま でしている。アルディラは長い髪を結い上げ、こちらは良く似合ったブラウスにスカーフ、 帝都でも見られる働く女の姿。キュウマは何を考えたのか、過去の戦いで入手していた帝 国軍の軍服を着込んでおり、当然のように帯刀している。極めつけはファリエルで、服装 が自由になる幽霊の特権で、ベルフラウが初心に帰る際に良く身につける赤い余所行きの 服をまとっていた。  ――仮装パーティ?  と、レックスとベルフラウは本気で疑ったのだが、呆気に取られる彼らに向かい、ヤッ ファがその口を開いた。 「よお、あんたがベルフラウの親父さんかい」 「ええ。失礼ですが、あなたは?」  彼ら護人が普段どのような格好をしているかなど知らないマルティーニは、気軽に握手 の手を差し出しながら尋ねた。  すると、ヤッファが澄まし顔で言う。 「レックスの父のヤッファです」  レックスが無言でコケた。珍しいことであるが、本気でコケた。  続いて、アルディラが艶然とした微笑を投げかける。 「母のアルディラです。息子が世話になっています」  何か言おうとして、レックスが舌を噛んだ。相当動揺しているらしい。  キュウマが、深々と一礼する。 「ベルフラウ殿のお父上様、キュウマと申します。こちらのレックスとは血を分けた兄弟 の間柄です」  足をもつれさせたレックスが食卓を巻き込んで床に倒れた。もう駄目かもしれない。  最後に、ファリエルがにっこりと満面の笑みで挨拶した。 「妹のファリエルです。レックス兄さんの大切な方のお父様にお会いできて、嬉しいです」  食卓が吹き飛んだ拍子に浮かび上がっていたパイナップルがレックスの頭を直撃した。 トドメ、だ。  それらにひとしきり笑顔で応対した後、さて、とマルティーニはベルフラウに言った。 「良い友人を持ったものだね、ベル」 「……ああ、もう! お姉さまっ。お父様は、レックス先生のご家族の事情もご承知なん です」 「あら」  顔を真っ赤にしてベルフラウが言うと、アルディラはバツが悪そうに他の三名を見た。 キュウマとファリエルはいかにも「恥ずかしいけど一生懸命がんばりました」という様子 で赤い顔を隠しており、ヤッファは「だろうな」と肩をすくめていた。 「お前の親父さんのことは、レックスに聞いてたからな。まあ、マルルゥがこれくらいや らねぇと駄目だってうるさかったからよ、付き合ってやったぜ」  余裕の発言であるが、それで残りの三人の恥ずかしさが減るわけではない。こそこそと 退散していく三人をよそに、ヤッファは顎に手を当て、マルティーニを覗き込むように自 分の顔を近づけた。  不意に近づいたヤッファに、マルティーニは思わず身体を引きそうになったが、持ち前 の胆力と眼力でその場に足を留めた。じっくりと観察する視線を前に、臆せずに言う。 「何かね。人間が珍しいのかね」  それに、ヤッファはニヤリと口元を歪めて笑った。 「まあな。外の人間はそうそう来ねぇ。来ても、俺たちを化け物だのなんだのうるさい連 中ばかりでよ、こっちはうんざりだ」  それらの事情は、マルティーニも娘から聞いていた。かつて召喚術の実験場であった島 では、凄惨な実験の数々も繰り広げられていたらしい。彼らがリィンバウムの人間を忌避 するのも、やむをえないことだ。  だが、彼の言いたいことはそれだけではあるまいとマルティーニは思う。真っ直ぐに見 つめてくる瞳には、何かを伝えようという感情がある。  その意を、マルティーニは汲み取った。それがわかったのか、ヤッファは満足そうに笑 う。 「ふ……まあ、古い話を持ち出す理由は、もうこの島にはねぇな。受け入れるのが大事な 時だってあるだろうよ」 「同感だね」  受け入れるのがね、とマルティーニは反芻する。  そして、改めて手を差し出した。 「では、もう一度握手してもらえるかな、レックスくんの父親殿」 「いいぜ。ベルフラウの親父殿」  今度の握手は硬く、お互いに認め合ったものだった。                 ※ 「楽しい方々じゃないか」  護人たちが家を辞すると、マルティーニは娘とレックスに笑い混じりにそう言った。頭 痛をこらえるかのような二人は顔を見合わせると、マルティーニが実に楽しそうにしてい ることに首を傾げた。 「お父様、楽しそうですね」 「はは。人の価値をはかれるのは、どのような時だと思うね、レックスくん」 「人の価値、ですか?」 「もちろん、死んでよい人間がいるなどと言うわけではない。どれだけその人物が周りに とって無くてはならない存在であるか、ということだ」 「?」  突然マルティーニが言い出したことに、レックスは怪訝そうな顔をしたが、その質問に はベルフラウが先に応えた。 「その人のために、どれだけの人が自ら動くか……ですわね」 「さて、私のために、商会の者が何人動いてくれるだろうね」  そうして、マルティーニは愉快げに笑った。  してやられた、という気分だった。                 4  初日は護人たちとの会見やユクレス村の散策で終え、夜はレックスの家で娘の手料理と 歯ごたえのある盤上遊戯を楽しんだ。  食卓を挟んで難しい顔をするレックスの打ち手が素直なことは予想できていたが、背後 から彼の首に腕を回して盤を覗き見る娘が、まさか自分に三度も敗北を味あわせるとは思 いもしなかったマルティーニだ。 「何やってるのよ、先生。この状況なら騎士はこっちでしょう?」 「あ……うん」  レックスはというと、自分の頬に触れるベルフラウの髪が気になって仕方ないようだっ た。チラリチラリとマルティーニの表情を伺う彼が可愛くて、思わずからかいたくもなっ てしまう。 「ベル、私にはかまってくれないのかね?」 「そ、そうだよ、ベル――フラウ。せっかく親子二人で来たのに……」  だが、ベルフラウはレックスの言葉にはツンとそっぽを向いてしまう。どうしたことか と思えば、 「……ベル、聞いてるかい?」 「ええ、先生」  ベル、と呼ばなければ口を利いてもらえないらしいレックスに、マルティーニは肩を震 わせて笑いを堪えねばならなかった。  可愛い、と素直に思ってしまう。  レックスだけではない。彼に甘えているベルフラウの姿も、全てが可愛くて仕方が無い。  軍学校を卒業して家に戻ってきた娘は、美しく、聡明で、実の父親から見ても非の打ち 所の無い女性だった。商会の仕事もそつなくこなし、勤勉で新しいものを組み込むことに 躊躇いの無いその姿勢は、今までマルティーニが手を伸ばしていなかった方面での利益も 獲得するに至っている。  その娘の、なんと甘えた姿か。赤毛の青年に後ろから抱きつく形の蜂蜜色の髪の娘は、 まるで満腹になった猫のように満ち足りた顔だ。 (ベルフラウの膝の上にいるオニビがそんな感じだ)  似たもの同士め、と思いつつ、人のことは笑えないことに気がついた。 「……やはり親子、か」  一番最初にレックスを気に入り、娘の家庭教師としたのは、マルティーニ自身なのだ。  呟きに若者二人が自分を見るのを確認し、頃合いか、とマルティーニは一度瞼を下ろす。  視界を閉ざした中で見えるのは、昼間見た自然豊かな忘れられた島の風景。  豊富な果物に、広い畑。  友人想いの護人たち。レックスを慕う気の良い村の人々。  何より、仲睦まじい二人の姿。 (良いな、これは)  未来を想像する。  きっと、この男ならば娘を幸せにするだろう。島の住人たちと共に笑顔で暮らしていけ るだろう。温かい家庭、理想の家庭が作れるのではないだろうか。例え困難があっても、 力を合わせて難なく乗り越えていけるのではないか。  父として、それ以上の喜びは無い。  だから、マルティーニは未来の幻視から瞼を上げると、レックスを見た。頃合い、だ。 「レックスくん――」  大切なことを切り出そうとした時だった。 「先生はん、大変です!」  唐突に一人の男が大声で叫びながら家に飛び込んできた。昼間料理自慢として紹介され たオウキーニという男の血相に、マルティーニは出しかけていた言葉を飲み込んだ。  相当慌ててきたらしいオウキーニが何か言うよりも早く、レックスが席を立つ。その顔 が昔一度だけ見た険しいものになるのを、マルティーニは目撃した。 「何があったんですっ」 「ならずものが出たんですわ! 子供たちを人質にして、人間を出せと言うとります」 「そうか……マルティーニさんを案内しているのを見られたんだ」  レックスの沈痛な顔に、マルティーニは見入る。先程までの楽しい時間の中には存在し なかった、苦悩の顔だ。  しかし、レックスはすぐに顔を上げると、壁に立てかけてあった美しい装飾の施された 剣の鞘を手に取った。 「行きます。マルティーニさんは、ここにいてください」 「わかった」  短い会話から大体の状況は察したマルティーニは、専門家に文句をつけることはせずに 頷いた。レックスなら上手くやる。そういう確信もある。村の子供たちやベルフラウを危 険にさらすことなく、彼なら悪漢を追い払うのだろう。  そう思っていた。  だが、レックスの次の言葉はマルティーニの期待を大きく裏切っていた。彼はベルフラ ウに目を向けると言ったのだ。 「ベル、行くよ」 「ええ」  目を見開いた父が見ると、ベルフラウはすでに弩を手にしていた。                 ※  マルティーニが制止するオウキーニを説得して巨大なユクレスの木の下にある祭壇に向 かった時、状況はすでに最終局面に入ろうとしていた。  地面に剣を投げ捨てたレックスが、狼の亜人の前に傷だらけで膝をついていた。その背 後では二人の子供が捕らえられており、五人のならずものの前にレックスが無抵抗に傷つ けられたことが、手に取るようにわかった。  そう、初めてあの青年に会った時。その時も、同じだったのだ。  マルティーニたちを人質に取った工作員を前に、彼は無手で立った。そして、幾度切り 付けられ、何度殴られても説得を続け、自ら剣を抜くことは無かった。 「その子たちを……返すんだっ」 「黙れ!」  レックスの言葉に激昂し、亜人がその鋭い爪で彼の胸を抉る。鮮血と一緒にちぎれた肉 片が大地に落ち、様子を見守っていた村の住人たちが悲鳴を上げた。  亜人は言った。 「さっさと今日来た人間を出せ! お前らはこいつの考えに毒され過ぎだっ。ここ数年で 何度人間の船がここに来た!? ほとんどはこいつのお仲間かもしれないが、中には俺ら を連れて行くのを目的にした奴らもいただろう。どうしてそいつらがここに来れた? そ れは、こいつのお仲間が何度もここに来たおかげで、この島の場所が知られてきたからじ ゃないのか!?」 「…………」  レックスは痛みに呻きもせず、言葉も出さずに唇を引き結んでいた。それは、目の前の 亜人の青年の主張がある程度正しいと彼自身が思っているからに違いなかった。  それに調子に乗り、相手はさらに言う。 「そんなに人間のお仲間が恋しいなら、お前は島の外で生きればいいんだ!」  爪が振り上がる。誰もが、子供たちを捕まえている者たちですら、その大きな動きに注 目した。  そこへ、ベルフラウが叫んだ。 「そこまでよ!」  声がしたのは、全員の真上だ。ユクレスの木の枝から飛び降りたベルフラウの姿に、そ の声の威圧的な力に、思わず狼の青年も振り返る。  直後、ベルフラウの召喚したオニビが猛烈な閃光を放った。太陽よりも眩しい光が闇夜 を吹き飛ばし、一瞬世界が真昼よりも明るく、白く染まった。目自体を焼くようなそれに その場にいた全員が短時間視界を奪われ、視力を取り戻した時には、ベルフラウとヤッフ ァに叩きのめされた亜人たちと、レックスに押さえ込まれた青年という状況になっていた。 「くそ……っ!」  青年は悪態をついたが、血だらけでもレックスの力は強かった。背中側から首と片腕を 極められて地面に伏せられた姿では抵抗もできず、彼は悔しげに言う。 「お前は間違ってる……!」  それは強い言葉だったが、レックスは躊躇いも無く返した。 「間違っていないって信じてる。俺は――」  と。 「俺は、この島が好きだよ。だから、この島のためになることがしたいんだ」 「だったら、なんで人間を連れ込むっ」  変わらない剣幕。牙を剥き出す拒絶に、レックスは真剣な顔で言う。迷いの無い、今思 いついたわけではない、彼の抱き続ける考えを。 「……外の人間との交流は、絶対にこの先必要になる。この島がはぐれ召喚獣の島じゃな く、一人一人意思のある君たちの生活する場所として認知されないと、いつまでもここは 狩人たちに狙われることになる。無色の派閥だって、いつまたやって来るかわからない」  大切なのは、と。 「大切なのは、追い払うことじゃない。お互いに、認め合うことなんだ。島のみんなが外 の人間を受け入れられれば、きっと外の人間もここを受け入れるようになる。時間はかか るかもしれないけど、絶対にそうなる」  ちっ、と組み伏せられた青年は舌打ちする。 「そんなこと、信じられるかっ」 「信じてる」 「!?」  亜人は目を見開いた。それは叫びでも何でもなかったが、レックスの強い言葉。 「俺は、信じてるよ」 「……くそっ! 信じられるか、信じられるか!」  最後にわめきちらし、亜人は他の面々に捕らえられて連れて行かれる。あれはどうなる のかね、とマルティーニがオウキーニに尋ねると、彼は苦笑しながら答える。 「メイトルパ流のお仕置きをして、その後放免ですわ。あの調子じゃ、また先生にちょっ かいかけますな。本来は、ああした集落を荒らすようなならずものには護人がきついのを かましとったそうですが、先生はんがそれじゃあかんゆいましてな」  彼ならいかにも言いそうだと、マルティーニは納得する。  わかってもらえるまで、話し合うのだと。何度も話し合い、そしていつかは理解しても らうのだと。 「……楽園、か」  忘れられた島のことをそう評したマルティーニは、傷だらけのレックスと、倒れかけた 彼を支える自らの娘を見た。正装を切り刻まれたレックス。綺麗な服を彼の血で染めたベ ルフラウ。そんな彼らの周りに集まり始める村の人々。 「私は、少し勘違いしていたな」  そこは楽園ではなかった。  レックスも、ベルフラウに絶対の安全を保証する男では無いのだ。                 ※  ベルフラウの母──つまり、マルティーニの妻がこの世を去ったのは、娘が生まれて間 もなくのことだった。  そのこと自体は今は問うまい、とマルティーニは紙煙草の紫煙をくゆらせながら首を横 に振る。大切なのは、彼女の忘れ形見である娘には絶対に幸せになって欲しいと願うマル ティーニの心だ。 (ベルを幸せにするのは、私の義務だ)  マルティーニは、妻を亡くしてから自分にそう言い聞かせてきた。多忙な身のわずかな 時間を使って娘と一緒にいられる時間を作り、彼女の将来のために良かれと思って様々な 習い事をさせた。窮屈な子供時代だったかもしれないが、それすら大人になってからの幸 せのためと割り切って彼女に最高のレディたる教育を施してきた。同時に、教育以外の部 分でも彼女が希望することは全て叶えてきたつもりだ。家を離れて軍学校に入ることを許 可したのも、帝国一の格式云々よりも、彼女の希望であったからに過ぎない。そうでなけ れば、誰が可愛い娘を手放すものか。 「ふう……」  深く白い息を吐く。無駄な場所を巡り始めた思考を収め、マルティーニは静かに星空を 仰ぎ見た。  ユクレス村にあるレックスの家の中では、現在ルシャナの花の妖精マルルゥによる治癒 の術が家の主に施されている。ベルフラウはその補佐に立っており、マルティーニは一人 外に追い出される形で佇んでいた。  まだ、事件からそれほどの時間も経っていない。村の中は騒然としており、護人のヤッ ファは家を一軒一軒訪ねては安全が確保されたことを報告していた。娘の話では面倒くさ がりということだったが、仕事をおろそかにするような人物ではないようだ。  皆が忙しく立ち回り、その中でマルティーニは独りだった。マルティーニ家の長となっ て以来、これほど何もしないで良い時間というのは、無かったような気がする。マルティ ーニはいつも多忙であり、常に走り回ってきた二十数年だった。  思わず、苦笑してしまう。 (結局仕事にかまけていて、私自身があの子に何かしてやったという記憶は無いな)  思い出せるのは仕事のことばかり。それで何を偉そうに義務を語るか。  懐に灰皿を探そうとして手ごたえを感じなかったマルティーニは、自分のすぐ近くに灰 皿を掲げたオニビを見つけ、ありがたくその上に煙草の灰を落とした。短くなった煙草を すり潰すと、二本目の煙草にオニビが火を点す。 「すまんね」 「ビビィ」  遠慮しないで、とオニビが笑顔を浮かべる。その頭をガシガシと撫で、マルティーニは 小さな護衛獣に向かって呟いた。 「結局、現実に理想を持ち込み過ぎるのは良くないのかもしれないね、オニビ」 「ビィ?」  難しい話はわからない、というオニビに、マルティーニは片目を瞑って冗談めかし、寂 しげな口元を笑みで覆い隠した。 「私はね、ベルに最高の花嫁だけではなく、最高の母にもなってもらいたいと思っている ということだよ」  そう、若くして命を失うことなく──遠くても、健やかに暮らしていることを確信でき る場所で生きて欲しいと願ってしまうのだ。                 5  翌朝になると、レックスは何事も無かったかのように元気な姿で食卓についていた。マ ルルゥの治療に即効性があるというより、多分には彼本来のやせ我慢体質だろうとマルテ ィーニは判断する。  事実、彼は椅子からは無理に立ち上がろうとせず、食事の準備も全てベルフラウに任せ ていた。動こうとすると、彼女が柳眉を逆立てて怒るからだ。 「心配するこちらの身にもなってもらいたいわ」 「ビビィ〜」  ぶちぶちと文句を言うベルフラウに、オニビがまったくだと頷く。二人がかりの攻撃に、 レックスは肩身が狭そうにお茶をすする。  マルティーニが驚いたのは、レックスの見舞いにやって来た子供たちがベルフラウのこ とを先生と呼んだことだ。娘から青空学校で教鞭を執ることもあると聞いていたが、実際 に自分の娘が先生と呼ばれるのを前にすると、こそばゆいものを感じる。 「今日は学校はお休み?」  と尋ねる子供に対し、ベルフラウは安心させるように微笑んで言った。 「レックス先生はしばらくお休みだけど、その間は私が授業をするから、先に行って昨日 までの復習をして待ってなさい。他のみんなにもそう伝えてちょうだい」 「はいっ」  元気良く家を出て行く子供を見送ってから、ベルフラウはレックスに授業の進行状態な どを確認し、教材を抱えて自らも家を出る。 「お昼には戻ります」 「休暇先でも仕事とは、気が休まらんね」  マルティーニは苦笑してそう言ったのだが、ベルフラウは一瞬きょとんとしてからクス クスと笑い、 「そうね。お父様の娘なんだなって実感します」  むしろ、足取りを軽くして行く。その言葉はマルティーニに半分の喜びと半分の苦い気 持ちを与えたが、レックスの前でため息をつくのもはばかられ、彼は娘の淹れた茶を口に 含むことにした。複雑な感情は、胃に流し込んでしまうのが一番だ。  自然、残された状態になった父が尋ねることと言えば、娘の前では聞けないことに決ま っていた。 「ベルは、しっかりとやっているかね」 「はい。彼女はものごとを整理して教えるのが上手くて、子供たちも理解しやすいみたい です。特に女の子は、俺よりも彼女の方が相談しやすいみたいですね。正直助かっていま す」 「なるほど。あの子には商会の手伝いもしてもらっているのだが、手を抜かずなかなか良 い仕事をする。このまま私の後を継いでくれれば、肩の荷を下ろせるのだがね」  少し意地悪かな、と思いつつも、マルティーニはレックスの様子をうかがいながらそう 話題を振った。すると、予想通りレックスは表情を引き締めてコホンと咳払いをする。 (生真面目な男だ)  おそらく、レックスの方からも話題を振る機会を探っていたのだろう。ベルフラウのい る場所では言いづらいのは、お互いに同じだ。 「そのことに関してですが、マルティーニさんにお話があります」  茶で唇を湿らせ、レックスは緊張の面持ちで言う。それにつられ、笑顔で受けるつもり だったマルティーニも無意識に顔を険しくしてしまう。 「マルティーニさん」 「うむ」  腹に力の入った声に、とうとう来るか、と食卓に身を乗り出す。  が。 「実は……なんですが」  レックスが歯切れ悪く言いよどむ。それに気合を外され、マルティーニはガクッと肩を 落とした。  ここに来て、赤毛の青年はその先を言って良いものかどうか迷ったらしい。大いにあり そうなのは申し訳なさで、彼の優しさから来るものだろう。  しかし、逡巡は短かった。すぐに深呼吸して決意を固めると、レックスは食卓に額をこ すりつけるほどに深く頭を下げて叫んだ。 「お嬢さんを俺にください!」  それは単純極まりない言葉だったが、それだけにわかりやすく、マルティーニの心を動 揺させた。どれほど準備をしていようと、実際に言われると焦ってしまうものはある。 「う、うむ……」  低い位置にある赤毛を見下ろし、マルティーニは用意していた言葉を探した。だが、不 思議と口から出たのは屋敷を出る際に決めておいた言葉ではなかった。 「君は、あの子との間にどんな未来を考えているのかね」  快く認めるつもりだった。娘の嫁ぎ先として理想ではなくとも、レックスが良い男であ ることには変わりない。マルティーニも気に入っており、何より娘が愛している男だ。  なのに、マルティーニは尋ねていた。昨夜自分が見た、幸福な未来。それと同じものを 目の前の青年が考えてくれているかどうか、どうしても聞いてみたくなったのだ。 (きっと、幸せな未来だろう)  愛する者との間に、それを夢見ない者はいない。この美しい、しかし楽園ではない場所 で、自分こそがベルフラウを幸せにするという力強い言葉を聞きたかった。 (そうすれば、心配は何も無い)  レックスという青年が約束を破らないことをマルティーニは知っている。彼が幸せにす ると言ったら、絶対に最大の努力を払ってくれるはずだ。 「ほんの少しの時間でいい。ベルとの未来を想像してみてはくれないだろうか。あの子と 築く未来を、私に教えてくれないだろうか」 「ベルとの、未来……」  青年は、昨夜マルティーニがそうしたように瞼を下ろした。  何を見るのだろう。  平和な忘れられた島の姿だろうか?  子供を抱えるベルフラウの姿だろうか?  ジッと見守るマルティーニの前で、レックスは口を開く。彼の見たものを、伝えるため に。 「色々と、大変なことがあると思います」  マルティーニが想像していたものとは、まったく違う未来を。 「昨夜見てもらった通り、この島は決して平和とは言いきれません。もともとが違う世界 から召喚された人たちですから、価値観も大きく違う。時には他の世界の者を嫌って傷つ ける人もいます。言葉が通じない獣同様の召喚獣だって、森の中にはたくさんいます」  包み隠さない島の現状。夢見ない、ありのままの現実。 「そんな彼らを商売に使うために、外から狩人がやって来ることだって、残念ながらあり ます。島のみんなの外の世界への不信感は、かなりのものです。積極的に外との交流の計 画を進めているのは、護人たちくらいです」  人間を嫌う場所。はぐれ召喚獣たちの島。  そこを開かれた場所に変えていきたいと、昨夜彼は語った。  一人で?  否。 「俺はこの島を、ベルと一緒に変えていくつもりです」  目を見開くマルティーニに、レックスは頷いて言う。 「この島は、楽園ではないかもしれません。だけど、俺はこの島が楽園であればいいと思 っています」  何故なら。 「俺は、この島が好きでから。ここで生きている人たちのことが、好きですから」  青年は、自らの手を見る。理不尽な力に不幸にされる人たちを守るために強くなろうと 軍学校に入った少年の手は、今やあの頃とは比べ物にならないくらい大きく、逞しくなっ た。 「俺の願うこと。理不尽な力に泣く人がいない世界を、ここからなら作っていける。そう 思うんです」 「……ここから、かね」  マルティーニは、唾を飲み込んだ。  この島だけではない、とレックスは言ったのだ。 「この島を楽園に。そしてリィンバウムを。きっと大変で、時間がかかります。その道で、 俺はベルに隣にいて欲しいと思います。楽園を作る手伝いを、彼女にして欲しいと思いま す」  レックスの思い描く未来が、マルティーニにも見えた気がした。  決して甘い恋に溺れたものではなく、痛みや悲しみに満ちた未来だ。  それでも、いつか優しい時間に辿り着く、最高の場所に辿り着く、そんな未来だ。 「……なるほど」  ため息をつく。  参った、とマルティーニは椅子に身を沈めた。 (まさか、理想の世を現実の世に生み出す未来、とはね)  胸が躍ってしまうのは、仕方ないことなのかもしれない。  見てみたい、と思ってしまう。  娘が、笑顔だけに囲まれて生きる姿も魅力的だが、傷つきながらでも生き生きと駆け、 そして作り出した理想の世界を、この目で見てみたいと思ってしまった。 (理想以上の男だったよ、レックスくん)  不意に襲ってきた笑いの衝動に、マルティーニは肩を震わせた。何かまずいことでも言 ったのだろうかと不安げな顔になるレックスに、彼は最後の質問をする。 「では、その辿り着いた場所で、君はベルとどんな生活をしたいね?」 「え? ええと……そうですね、今みたいに学校で勉強を教えたり、畑を耕したり」  ちょっと照れる。 「こ、子供はたくさん欲しいかなって」  頬を掻きながら言ったレックスに、ついにマルティーニは破顔した。押え切れない感情 が、それこそマルティーニの望んでいた言葉を聞けたことによる喜びが、真っ直ぐに口か ら出て行ってしまった。 「孫の名前は、つけさせてくれるんだろうね?」  青年は一瞬呆け、 「もちろんです!」  力強く、頷いた。                 ※  マルティーニは理解した。  彼がベルフラウの嫁ぎ先としてレックスや島に求めたものがあるように、レックスたち にもベルフラウに求めるものがあるのだと。  それは戦う力でもあるだろうし、支える力でもあるだろう。未来を作っていく力と言っ ても良い。  そして、ベルフラウもレックスや島に求めるものがあるに違いない。  安心しよう。父による幸せにする義務など越えて、娘は自分の手で幸せになるべき場所 を見つけたのだから。  求め合ったものが正しく共鳴し、未来へ続くならば、その行方はきっと素晴らしいもの になるに違いないのだから。                 結  最終日、マルティーニは潮風を浴びる桟橋の上に立って海を眺めていた。丸太を組んで 作ってある足場は丈夫で、荷おろしにも耐える立派なものだ。  少し風に当たりたかったのは、昨夜遅くまでレックスやヤッファと酒盛りをしていたか らだ。浮かれ気分のままに杯を重ね、普段ならば絶対にしない深酒をしてしまった。おか げで、まだ自分の息が酒臭い気がする。 「お父様、気分は晴れまして?」  軽い足音と共にやって来るのは、ベルフラウだ。結局、彼女もこの三日目に島を離れる ことになった。レックスの怪我を心配した彼女は島に残ることを主張したのだが、マルテ ィーニの手前そこまで甘えるわけにはいかないと、レックスが説得した。  残してきた仕事のこともあるし、何より、 「すぐに俺がそっちに行くから」  というレックスの言葉にしぶしぶながら娘が従ったことを、聞き耳を立てていた父は知 っている。実に可愛い。  そのベルフラウの背後には、大量の土産を抱えたヤッファと、手ぶらのレックスがいる。 「先生の調子が悪いんじゃ、ヤッファさんにお願いするしかありませんわよね」  と、昨夜酒に酔ったヤッファにベルフラウが了承を取り付けた結果だ。  二人とも親子に気を利かしているのか、一定の距離を保っている。桟橋の上で娘と並ん だマルティーニは、レックスたち、それからその向こうに見える森を眺めて目を細め、言 った。 「良い場所だったよ。それに、良い話も聞けた」 「ふうん?」  マルティーニとレックスの会話を知らないベルフラウは、小首を傾げる。初日の事件の せいで、少し印象が悪くなったかな、くらいは思っていたのだろう。 「お父様が気に入ってくださったんでしたら、嬉しいわ。ここは、私の大切な場所ですか ら」  両腕を広げ、島を背負った姿で娘は微笑む。それは、この場所こそ私の楽園、と言わん ばかりの笑顔で、マルティーニはそれに見惚れた。 (二人目……だな)  そんな笑顔をする女性を、マルティーニはもう一人しか知らない。もうこの世にはいな い、大切な女性しか。 (面倒を見ずとも、子は親に似てくるものだね)  そっと心の中で亡き妻に語りかけると、マルティーニは眩しそうに娘を見ながら言う。 「ベル。お前には親らしいことは何一つしてやれなかったかもしれないが――」 「あら、お父様」  自分で幸せを見つけたようで安心した、と続けようとしたところを遮られ、マルティー ニは面食らった。ベルフラウは笑みのまま、人差し指を立てて言う。 「お言葉の最中に失礼ですが、お父様は私に素晴らしく親らしいことをしてくれましたわ」 「なに?」  思わず疑問を声に出してしまう。そんな父親の腕を取り、横に並んでベルフラウは囁い た。 「お父様は、私に素敵な家庭教師を紹介してくれましたもの」  全てが始まったのは、そこからなのだと。  いたずらっぽく言って、ベルフラウは父の肩に頭を寄せた。  マルティーニは、そうか、と頷いて瞼を下ろす。今度の幻視は、決して甘いだけのもの ではなかった。何度か話に聞いた過去の島での戦いだったり、未来にあるかもしれない傷 ついた娘の姿。だけれど幸せそうな、娘の笑顔。 「そうか……それは盲点だった」  それを導いたのが自分だというのならば、君らの作る未来を誇る権利は、私にもあるの だろうか。  瞼を上げると、水平線の彼方に一隻の船が見えた。あれが辿り着けば、自分は娘を連れ てこの島を離れる。 「名残惜しいね」 「気に入ったんでしたら、老後にいかがです?」 「ふむ、悪くないね」  なかなかの妙案に、マルティーニは含み笑いした。そういう未来も、ありえるわけだ。  未来の行方は、まだ定まってはいない。自分の未来も、彼らの未来に便乗させてもらっ ても、別に構わないのではないだろうか。 「うむ、悪くない」  段々と近づいてくる、日常への回帰を求める帰路の船。マルティーニは、もう一度島を 振り返って、呟いた。 「次に私がここに来る時、この島はどのように変わっているのだろうね」  未来をノックするような問いに、彼の未来は答えた。 「きっと賑やかになっていますよ、お父様」  ――未来は、愛した女性の姿をしていた。                                    了