サモンナイト3 レックス×ベルフラウSS 「朝時々夜の寝坊」  目覚めたら隣には最愛の人がいました。  そんな、恥ずかしくなるような言葉が似合う朝だって、時々はあるものなのだ。 「ん……ふあ」  その朝、小さなあくびを噛み殺して身を起こしたのは、蜜色の髪をした少女の方が先だ った。ベッドの上に持ち上がった半身から、白いシーツが衣擦れの音を立てて滑り落ちる。 滑らかで素肌に優しいシーツの行方を目で追い、少女はぼんやりとした表情で長く繊細な 指を己の額に当てる。  しばらくの空白。  それから、少女は思い出したかのように自分の傍らに身を横たえる青年を見た。同じよ うに素裸だが、やせっぽっちな少女の肢体とはまるで違う、鍛え抜かれた魅力的な男の裸 体がそこにある。  身体のそこかしこに赤い跡がついており、それは少女──ベルフラウにも同様のことで あった。  寝起きで乱れた蜜色の髪から覗く首や、まだ女性的な丸みに乏しい小さな肩、年齢を示 すかのように膨らみに欠ける平坦な胸、果てはやわらかそうな腹や背中、内股に至るまで に、桜の花を散らしたような朱が窺える。  それは、昨夜ベッドの上で何があったのかを証明する、夢の残滓だ。 「────」  無言で口元を弛めたベルフラウは、片膝を立ててその上に肘を乗せて頬杖をついた。と ろけるような眼差しで右手を伸ばし、赤毛の青年──レックスの胸に手を当てた。  着やせするのか、服の上からはわからない逞しい胸板。少女の指が、くすぐるように赤 い口接けの跡をなぞり、油絵のカンバスに線を描く早さでその爪先を青年の胸の突起へと 移動させる。 「う……ん?」  ツン、と押された青年がまどろみの中で眉根を寄せると、少女はさらにその指を彼の頬 につけてもう一度押す。それを嫌がったレックスが、寝返りを打って逃げようとする。 「先生、朝よ」  クスリと笑ってベルフラウが言うが、レックスは起きない。少女に背中を向けるような 形で横になった彼は、寝言なのか唸りなのかわからない意味の取れないことを小声で呟き、 朝の惰眠を継続する気配。  それを感じ取ったベルフラウは、仕方ない人ね、とこれ以上無い幸せそうな笑みを見せ た。少女に好意を寄せる者が見れば、その笑みを浮かべさせた相手に嫉妬しないではいら れない笑みだ。 「……うん」  彼女は自分の両肩を抱き、全てが夢でなかったことを確認するかのように、自らの小さ な身体に刻まれた跡を一つ一つ数えた。レックスと同じベッドで眠った後は、いつもそう していた。眠る彼を眺めながら、それが一人のベッドで見ている夢ではないことを確認す る。 (自分に自信なんか……無いものね)  彼が聞けば驚きそうなことを考える。  肉付きに乏しいやせっぽっちな身体。見詰め合おうとすればお互いに首が痛くなる身長 差。どう背伸びしたって自分は子供で、レックスは大人なのだ。  それでもベッドに潜り込むのは自分の我が侭で、彼はそれに嫌々付き合っているのでは ないかと。その出来事すら、自分が寂しくベッドの中で夢に見ていることなのではないか と。 (自信なんか……無いの)  だから、朝起きて、自分の身体を確認すると安心出来た。  レックスが触れた跡が、彼女に自信をくれる。 「……大好き」  目を細め、ベルフラウは自分に色々与えてくれる青年に向かって呟いた。ベッドのシー ツの上を四つん這いに動き、レックスの上に跨るような形でその頬に唇を寄せる。  掠めるような口接け。 「ん」  レックスの肩を押して、横向きから仰向けにその身体を正してから、もう一度。今度は 唇を舐めるように。小鳥がついばむようにそれを繰り返して、ベルフラウはレックスの胸 に両手を当てて自らの身体を倒した。地面に立てば揃わない顔の高さも、少しのズルをす れば、頬を合わせられるほどに近い。  頬と頬を寄せ、子猫の頬擦りをしていると、青年の瞼が上がった。寝ぼけた瞳が、視界 の中の蜜色を見る。 「……ベル?」 「おはよう、先生」  耳元で囁く快い声に、レックスは眠気の取れない頭で考えた。昨夜はベルフラウと同じ ベッドで眠りにつき、そして朝を迎えたわけだが。 「……まだ夜?」  少女が彼に抱きつき、かまって欲しそうに頬を寄せている状況に、レックスは間抜けに もそう尋ねた。  すると、ベルフラウはぷっと吹き出して、 「そう。まだ夜!」  レックスの唇に自分のそれを重ねた。先ほどまでの軽いものではなく、やや強め。他に 違うのはレックスが反応を示すことで、持ち上がった手が少女の背中に回された。 「んん……はん」  具合を確かめるように角度を変えて唇を吸い、合間にため息混じりに酸素を求める。青 年の舌の先が自分の唇を叩いたので、ベルフラウがわずかに口を開くと、濡れた熱がそこ を通り抜けてきた。 「んっ」  まだ慣れない大人の口接けに、思わずベルフラウは顔をそらして逃げようとするが、背 中に回されていた青年の手が蜜色の頭を押さえ、それを許さない。観念した少女がおずお ずと自らも舌を伸ばすと、すぐにレックスのそれが絡みついてくる。  互いの唾液の味を直接舌で伝え合い、二人はしばし夢中で口遊びに没頭した。つつき合 い、歯茎をなぞり、一度離れては軽い口接けをアクセントにする。  口の中と唇の周りを、自分とレックスの唾液で濡らしながら、ベルフラウは思う。 (こんなこと……先生以外の人となんかしたくない)  大人の口接けは、好きの度合いを試すような激しいものなのだ。それを教えてくれたの は、やはりレックス。彼女の家庭教師。 「はあ……っ」  唇が解放されると、ベルフラウは弾けるように息をした。舌にジンとした痺れにも似た 疲れがあり、それは少女の一生懸命さの証明だ。呼吸をするのも忘れていたベルフラウの 頬は上気し、レックスは微笑んでその額に唇を押しつける。 「よくがんばったね」 「こ、子供じゃないもの。このくらい……」  あやすように言われては、思わず反発してしまうもの。むうっと頬を膨らませる少女に、 レックスは苦笑してその鼻頭に口接けた。次に頬、唇、顎、と進み、彼は言う。 「上になろうか?」 「え?」  と思った時には身体の上下が入れ替わっていた。少女の重さなどたかが知れていて、レ ックスが身を傾ければ、それだけでゴロンと二人もつれるように転がってしまうのだ。  上に乗る精神的優位を奪われてしまったベルフラウは、む〜、と不機嫌な顔を作って睨 んでみたが、言葉よりも行動とばかりにレックスは先程の流れを再開する。  噛み付くように顎の裏。喉に舌が触れた時にはくすぐったさに声が漏れ、それが焦らす 動きで少女の柔肌を甘噛みする。まだ骨ばかり目立つ鎖骨に達すると、レックスはその窪 みを積極的に攻めた。成長期に差し掛かろうと年齢の少女の肢体は丸みに乏しく、そのこ とを責められているようで、ベルフラウは恥ずかしくなる。 「そんなところ、楽しいの?」 「うん」  笑みを含んだ調子で頷かれては、閉口するしかない。鎖骨という頼りない部分を触れら れるのは、なかなか不安なものなのだ。そこだけではない。喉だって、ゾクゾクするくら い他人には触れられたくはない場所なのに、『こういう時』はむしろそういう場所が重点 的に扱われている気がする。 (試されているみたい)  怖がりますか。  逃げ出しませんか。  問いかけるように、レックスはベルフラウの身体をなぞる。 「大丈夫……」  知らず口に出ていた声に、レックスが視線を上げる。自分の肩口に顔を埋める赤毛の中 からの、問いかけの延長のような瞳に、ベルフラウは照れ隠しを含んだはにかみ笑いを浮 かべた。  大丈夫ですとも。戸惑いはあれど初めてなわけでもないし、毎回確認されるのも悔しい ものがあるし、それでもその気遣いがやっぱり嬉しい今日この頃であるのだから。 「続けて」  少し大人な関係を望んでベッドに入る込むのは自分。それよりも進んだ大人を見せてく れるのは彼。両方が両方を受け入れれば、それは仕方無しの妥協ではなく、合意の上での 背伸びになる。  青年の行為が自分の白い胸と、その先端にある熟した果実のような突起に至ると、少女 は熱を帯び始めた吐息を漏らして、彼の頭を抱え込んだ。豊かな赤毛を指に絡め、チロチ ロと予備動作のように先端をくすぐる舌の動きに身を硬くする。  そこは他の場所よりも少しだけ敏感で、小さな先っぽなのに胸全体に広がるようなむず 痒さ。執拗につつかれ、唾液で濡らされると、肌が熱くなって、自分の内側から生まれた その熱が下腹部にたまっていくような感じがした。 「…………っ」  舌で乳首を転がしていたレックスが、おもむろにそれに歯を立てると、ベルフラウの背 が後ろに反ろうとする。しかしそこは白いベッドの上であり、一瞬肢体が跳ねる以上のこ とはない。  少女の熱と共に硬さを宿した先端のしこりを、青年は慎重に自らの歯で挟む。赤子がそ うするように強く吸い、そうしながら赤子ではないことを示すように空いた手でベルフラ ウの脇から腹までをさする。 「せんせ……美味しい?」  顔を真っ赤にしながら問いかけると、一際強く乳首を吸われ、少女は悩ましげに眉根を 寄せた。信頼する教師が自分の胸をついばんでいる姿は、刺激的な光景だ。それを視界に 収め、身体全体に及びつつある痺れた感覚に顔は上気して息は荒くなり、ベルフラウは手 を彼の頭から外して自分の髪を掻き上げた。  火照った心、火照った肢体。鼓動は早鐘のように体内で響き、血の巡りがこめかみの辺 りで強く意識された。ほんのりと色づいた肌にはしっとりと湿り気を帯び、その上をレッ クスは彼女の腹部へと顔を移していった。  肌の温度はもうレックスの唇に負けないほどで、それでもそれが触れる度に焼印を押さ れるような熱さを感じた。強く吸われればそこは赤い花弁になり、きっと全てが終わった 後に少女にこれが夢ではないことを教えてくれる。夢の世界からの、現実への焼印。いつ かは消えてしまうけれど、消える頃にはまたつけてもらえば良い。 (あ……)  レックスが彼の唇の触れない場所があることは許せないとばかりに、丹念に口接けてく れるのは嬉しかったが、その最中に自分の下腹部に意識が行ってしまってベルフラウは耳 まで真っ赤になった。  胸から始まった痺れはその場所に集って甘い疼きとなり、そこに触らないと治まらない 突き上げる衝動となって少女を急き立てる。 (だ、だけど……)  青年は彼女の温かい腹に御執心であり、まだそちらに注意を向けてはいない。大人の段 取りはじれったく、昂りつつある少女の性の欲求に目を向けてはくれない。 (自分から言うなんて……)  恥ずかしい。  普段自分の意見を言うのに躊躇いはないし、真っ直ぐに言うことは美徳であるべきなの だが、それとこれとはまた別問題だ。  しかし、一度意識してしまうと腰の痺れは増すばかりで、触れてもらえないもどかしさ は、暴れたいような苛立ち、泣きたいような切なさに変わっていく。  それは不満というものかもしれない。  油断したのか、堪え切れずにベルフラウが尻をもぞりと動かすと、気がついたレックス が顔を上げる。あろうことか、口を手で押さえて、はしたない言葉を必死になって飲み込 んでいた顔を見られたベルフラウは、顔から火が出るくらいに恥ずかしくなってその手を 振り上げた。 「もうっ!」 「いたっ」  ぽこん、などという可愛らしいものではなく、がつんと拳で頭を殴られたレックスが何 か言う前に、ベルフラウは両腕を交差させて顔を隠して言った。 「そ、そこは、もういいから!」  恥ずかしさを怒りで誤魔化す声音に、青年は目をパチパチとさせ、それから彼自身照れ 笑いを浮かべて身を動かした。それに胸を高鳴らせてベルフラウは行為を待ったが、彼が それまでとは逆で、少女の顔にまで戻って口接けたことに、不満を爆発させる寸前にまで 行った。  だが、淑女としてはあるまじき言葉を吐こうとした口を、レックスは素早く自分の口で 塞ぐ。そして、スルリと忍ばせた指で、少女の足の付け根にある割れ目に触れた。  途端、ベルフラウの身体が震えた。だけれど、その刺激が頭の中を鮮明にさせて、自分 のはしたない思考に少女は穴が入ったら入りたい気分になった。顔を隠そうにもレックス の顔は目の前にあって、彼女のそうした想いすら受け止める瞳で見つめてきているのだ。  余裕のある態度にベルフラウは、ずるい、と思った。その辺りが大人と子供というか、 自分のいっぱいいっぱいさが、行為慣れしていないことの証明に思えて悔しかった。 (早く大人になりたい……)  不意に思う。  そうすれば、もっと上手に抱き合えるのだろうか。 「あ……んっ!」  思考を途切れさせたのは、彼の指の動きだった。抱き合ったまま、手探りで秘唇の周囲 をなぞった彼は、未成熟で閉じきった割れ目を人差し指と薬指を使って開く。空気に対し て剥き出しになった自分の秘部に、レックスの中指の腹が触れた瞬間、ベルフラウは腰か ら頭に抜けた快感に悲鳴を上げた。  鼻にかかった少女の声に、レックスはそこを傷つけないように優しく愛撫する。まだぬ めりの少ない少女の愛液を指の腹にからめ、それを彼女自身にまんべんなく塗りつける。 円を描くように指を動かせば、柔肉はたやすく形を変え、湿った姿になっていく。そのこ とで与えられるジンと麻痺するような快感に、ベルフラウが恥も外聞も無く声を上げて身 をよじると、足にツンと当たるものがあって少女はドキリとした。  火傷しそうに熱くて硬いそれは、彼のオトナ。 (我慢してる……んだ)  何食わぬ顔で首筋に唇を這わせるレックスだが、よくよく見てみれば頬を赤くして時々 ピクリと眉根を寄せる。それは決まって彼の股間のものが少女に触れた場合で、深呼吸が レックスの自制心を顕著に表していた。  するとベルフラウは、潤沢を帯びる自分の秘裂で彼の指が速度を増すのを意識しながら、 乱れる息の合間にわざと足を動かした。レックスの肉の棒を内股で撫でる。  が。 「く……っ」 「ひぁ!?」  悲鳴は同時に上がった。ベルフラウが動いた時、レックスもその指の先を彼女の内側へ と滑り込ませていたのだ。  二人はぎゅっと目を閉じ、レックスは歯を食いしばり、ベルフラウは下腹部に力を込め た。小さな穴の入り口を通り抜けた指の先が、口でくわえられたように圧迫され、レック スは少女の耳元で囁いた。 「ごめん……力抜いて」 「は、はい……っ」  かと言われても、自分の内側に他人の一部が入り込んだ状態で緊張するなという方が無 理だ。指先一関節分の異物感。ゆっくりと呼吸し、腰の締めつけを緩めると、引き抜かれ ると思ったそれがさらに入り込んできて、ベルフラウは目の前で火花が散るほど驚いた。 「き――」  きゃあ、と叫ぶことも出来なかった。これまでの人生、これほど情けない声を出したこ とは無い、と確信出来る。のけぞった身体を、青年の身体が押さえ込んだ。大口を開けた 顔なんてみっともないのに、一番見られたくない好きな人に見られてしまう。 「――い……あ……っ」  通された。身体の中に、指を一本通されてしまった。  そんなことがあるだなんて、つい最近までは知らなかった。知らなくても良かった。  だけれど、今は知っているのだ。その先があることも、もっと大きな快感があることも。 まだ自分が彼に我慢させていることも。 「い……から。先生、もう大丈夫だから……きて」  喘ぐように言う。レックスの指は、少女の呼吸に合わせて動き、締めつけが弱くなる隙 を見逃さずに前後する。とろけそうな肉壁を、少し曲げられた指の腹がくすぐるだけで、 脳天が沸騰しそうに込み上げてくる快感があった。  それでもそれはベルフラウだけの快楽であり、ずっと我慢している大人の人に、少女は 許してあげるからという響きすら込めて伝えたのだ。 「ベル……ごめん、俺も、もう……」 「うん……」  ごめんも何も無い。自分の欲望をぶつけるよりも、少女に快楽を与えることだけに専念 する自制心はどこからくるのだろう、とベルフラウは思う。おそらく、これからの最後の 行為の際に、彼女の苦痛が少しでもやらわぐようにとの配慮だろうが、それにしても、だ。  見れば、レックスの口の端には赤いものがついており、それは彼が唇を噛み切った跡だ。 自分がいたずら心で彼のものを足で撫でた際に、噛み切ったのだろう。  秘部へのもどかしさに癇癪を起こしかけた自分とは大きな違いだ、と思う。  いつだって自分を気にかけ、大切に扱ってくれる。 (そのうち……)  私だって、あなたを大切に扱ってみせる。  熱病に冒されたように潤んだ瞳で、ベルフラウはベッドに身を預けて力を抜く。視界の 中では、『待て』を解かれたレックスが、自分のものに手を添えて、ベルフラウのその部 分にあてがっているところだった。  何度か経験した、儀式と儀式の間を繋ぐ準備の時間。指など比べ物にならない太さのも のが自分の入り口を押し開き、もはや間違えようの無い状態になると、レックスの上半身 が再び彼女の胸に戻ってきた。  ただ、腰の位置を合わせた関係で、顔の位置はずれてしまったが。  それが二人の差のような気がして寂しくも思ったが、すぐに考える『自分』すら吹き飛 んだ。 「い……――っ」  串刺しにされた。そう錯覚するような衝撃があり、大きな異物が自分を掻き分けて入っ てくる。一瞬目の前が真っ白になり、手近なものに思い切り抱きついた。それが温かいレ ックスの身体なのだと理解する頃には、一番の苦痛は過ぎ去って青年は腰を進めるのを止 めていた。 「ベル……まだ痛むかい?」 「ええ……でも、少しは慣れてきたから」  心配そうなレックスに、ベルフラウはなんとかそう応えた。あながち嘘でもなく、幼く 小さな入り口を彼がくぐり抜ける時にはまだ痛みがあったが、膣に入られてしまえばそれ ほど苦痛は感じなかった。 (それに……)  と、こちらは口にせず頭の中でだけ呟く。 (こうしてると、先生と溶け合うみたいで……少し痛いくらいなら、おつりがくるわ)  広い背中に手を回し、その身体の線を掌で感じる。少女が落ち着いたのを確認し、レッ クスはさらに進入を続けた。そこは狭かったが、時間をかけた愛撫で滑りは悪くなかった。 奥行きも大人の女には適わない少女のそこに、自分の肉棒を半分ほど入れると、レックス は今度は動きを逆転させる。彼が腰を引くと、膣内のものを掻き出されるような感覚があ り、ベルフラウは思わず腰に力を入れる。そうするとより肉壁が彼のものによってこすら れ、腰の抜けそうな痺れに少女は甘い声を漏らした。 「ふあ……っ」  レックスが腰の前後を繰り返し始めると、彼女はもう何も考えられなくなった。少女の 身体の上を、青年の大きな身体が動き、その度にベルフラウは悲鳴じみた声を上げ続ける。  身体を割る小さな苦しみ。お腹を突き上げられる、不安感。引き抜かれていく安堵感。 二人がこすれる大きな快楽。そしてそれらに付随する、彼に求められる幸福感。  全てが波のように寄せては返し、二人の繋がった部分のたてる音が耳に入った時には、 顔なんか合わせられない互いの差に感謝したくなった。 「あん……っ。は……っ。せん……せい……っ」  好き、とうわごとのように繰り返した。普段言えば彼は照れて微笑むだけだけれど、こ うしている時は額に汗を浮かべながら頷いてくれる。真剣な顔で聞いてくれる。 「すき……せんせいすき……っ」  他に言うことなどなかった。下腹から突き上げる痺れは、広がるというよりも各所に凝 縮するようで、ベルフラウは散り散りになりそうな何かを必死に言葉に集めて口にした。 「せんせい……せんせい……っ」  頭に集まった何かは真っ白で、心臓のそれは動悸をこれ以上無く激しくさせる。肺に入 り込んだものは吐息を甘く熱くし、膣はもう内部全てが快楽を感じるために出来上がった かのように、レックスの動きをそのまま全身に伝えていった。  こみ上げてくるのは何だろう。  痺れてしまっているうちに作られた何かを自分の中に感じ、少女はそれの破裂が近いこ とを悟った。 (――熱い――)  世界が熱かった。 「――――!」 「ベル――っ」  レックスが震えて動きを止め、その両腕でベルフラウを求めた。無意識に抱き返し、少 女は自分の一番奥まで届いた何かに叫びを上げた。  全身が跳ねて弛緩し、自分の中にあった水風船が破裂して、サッと身体の熱を奪い去っ ていくような、熱病からの解放感。  それは何秒だったのか。それとも、何分だったのか。  知らないうちに、ベルフラウはレックスを掻き抱いたまま天井を眺めていた。少女の上 では青年が大きく肩を揺らしており、少し身体をずらしてベッドの上にうつぶせに倒れた。  どす、という力尽きた音に、少女は気だるくも幸せな気持ちで、その青年の背中に身を 寄せようとした。  そして、ぬるりとした手の感触に驚く。青年の背中と少女の手は、彼から流れた血で真 っ赤に染まっていた。 「あ……」  思い当たることがあって、ベルフラウは申し訳ない気持ちになった。しがみついた際に、 爪で引っかいてしまったのだろう。 「痛そうな顔なんて、まったく見せないんだから……」  まったくこの人は、とベルフラウは思う。  本当に大人で、少女のことを気遣って、これではベルフラウに立つ瀬が無いではないか。 (悔しい……いつか見てらっしゃい)  自分が大人になったら、そんな余裕打ち砕いてやる。自分が攻め抜いて、許してくださ いと言うまで――愛し抜いてやるのだ。  一つ決意して、ベルフラウはとりあえず怪我の手当てのために彼を起こそうと、声をか けた。 「先生、起きて。背中痛むでしょ?」  が。 「ん……いいよ、朝になってからで」  寝起きで疲れたのか、レックスは怠惰にそう言うのだった。他人の怪我は心配するくせ に、自分のことになると無頓着なのはどうだろう。その言い草に呆れたベルフラウは、肩 をすくめて教えてやった。 「今、朝よ」 「……あれ?」  今日も、良い一日になりそうだった。                                了                 ※ 「──っていう小説を書いてみたんだけど……いひゃい、いひゃいよベルフラウ〜」 「あーなーたーはー!」  軍学校の隅っこ。徹夜で原稿を仕上げたアリーゼのほっぺたをつねる、ベルフラウがい たのでした。  →クラスの女子の皆様へ   アリーゼ花と夢劇場第七回   『モノクロームの空に』 第三話「朝時々夜の寝坊」   モデルからの差し止めが出たので、発行を見合わせていただきます(ゴメンナサイ)                               終わり