サモンナイト3 生徒四人+全員集合!SS 「真夏の夜に逢いましょう」 第二幕 -Cパート 「男女四人寄ればかしましい → 生徒四人」 「せっかくだから、水着は他の人に選んでもらうことにしない?」 そんなことをアリーゼが言い出したのは、街で一番大きな百貨店の水着販売コーナーに 到着した時だった。 その言葉の意味をはかりかねて、ベルフラウにナップ、それからウィルの三人が彼女の ニコニコ笑顔を見ると、アリーゼは素敵な思いつきを語るように合掌して言う。 「四人いるし、二人で組になってパートナーの水着を決めるの。自分で決めると長くなり がちだし、他人の目から見たら自分にはこれが似合うんだって、新しい発見もあるかもし れないでしょ?」 「は? 俺たちも水着買うのか?」 ベルフラウとアリーゼが新しい水着を買うというので連れ出されたナップは、寝耳に水 という顔をする。海に行くとベルフラウに声をかけた手前少女たちの買い物に同行したの だが、自分の持ち物にそれほどこだわらない買い物不精の少年は、去年購入した水着を思 い出して眉根を寄せる。 「俺は去年のがまだ着れるから遠慮――」 と、言いかけて、目の前の少女二人を見る。 次に、所狭しと店内に並ぶ色とりどり、実に華やかな水着たちを見る。 「――しないで新しいの買っとくか」 「……わかりやすい男ね……」 健全な少年一人の姿に、ベルフラウが額に手を当ててため息をつき、ウィルも苦笑した。 「僕も、水着にこだわりはないから異存はない。ただ、僕はセンスが良い方じゃないから、 君らの納得出来る水着を選べなくても勘弁して欲しい」 「……ウィルまで賛成なら、仕方ないわね。どういう組み合わせにするの?」 四人中三人まで同意したので、肩をすくめてベルフラウが言うと、アリーゼが唐突に拳 を上下に振った。 「じゃんけんぽん」 「あ」 「あ」 「あ」 反射的に手を出してしまった三人は、アリーゼとウィルが「チョキ」、ベルフラウとナ ップが「パー」を出しているのを見て、アリーゼをうかがった。 少女は頷いて、 「じゃあ、わたしとウィルくん。ベルフラウとナップくん……でいい?」 「僕は問題なし」 「俺、アリーゼのビキニ選び――」 「仕方ないわね、これで行きましょう」 ナップが手を上げて異議を唱えようとした瞬間、ベルフラウの閃光のような左拳が無造 作に少年の鼻面を叩き、悶絶させた。それほど力がこもっていたわけではないが、鼻に当 たったので涙が出るほどに痛い。 さて、そういうわけで各人はそれぞれ思い思いの水着を選んで集合することにした。一 番最初に戻ってきたのはベルフラウで、次がウィル。遅れてナップが自信満々の顔でやっ て来て、最後にアリーゼという順番だ。 まず、ベルフラウが選んできたものであるが、 「はい。無難なところでしょ?」 黒いトランクス型の水着だった。サイドに黄色いラインが入っただけのシンプルなもの で、デザインとしては可も無く不可も無い。事前にサイズを聞いていなかったので、ベル フラウが用意したものはややナップには大きかった。店員に正しいサイズのものを持って きてもらって試着する。 「へへ、似合うか」 「それなりなんじゃない?」 「サンキュ」 試着室から出てきたナップは、黒い海パン姿で微妙に照れる。長身が細く見えないくら いに厚みのある鍛え上げられた身体は、肌をさらすと一般人との違いが顕著になる。男性 的肉体美とでも言うのか、引き締まった腰周りや太股とそのトランクスは意外なほどに調 和していた。本人がなかなかの美男子であることも考えれば、その気になれば水着雑誌の モデルくらい勤まりそうだ。 次に、ウィルがアリーゼに渡したのは、青いセパレーツの上下だった。両脇と右肩の上 を布地が通るもので、セパレーツといってもそれほど露出が強いわけでもない。腰にはパ レオを巻く形だ。 「ど、どうかな?」 「可愛いわよ、アリーゼ。さすがね、ウィル」 「それはどうも」 そっけなく肩をすくめるが、ベルフラウからみてその水着は充分にアリーゼの魅力を引 き出すものだった。例年のアリーゼであれば肌をさらけ出すのが恥ずかしいと、地味めな ワンピースの水着を選んでいたところであるが、今回ウィルが選んだものは彼女の成熟し た肢体を嫌味でない程度に周囲に示し、また少女の保守性を尊重してセパレーツの中でも 布地の多いものにしている。パレオなども、彼なりの心遣いだろう。本当にそつの無い少 年である。 そして、いよいよ次はナップの用意したベルフラウの水着である。ニヤニヤ笑ったナッ プは何の躊躇もなしに少女に自分の用意した水着を渡す。 それは。 「……海パン?」 「お前の胸ならバレねぇ。いける!」 「あーなーたーねー!」 「いひゃひゃひゃひゃひゃ!」 まなじりを吊り上げたベルフラウがナップの両頬を掴んでガクガクと揺さぶったが、少 年は大爆笑するのみだ。ひとしきり笑うと、ナップは海パンとは別に持っていた水着を渡 す。 「こっち、本命な」 「……最初からこっちにしなさいな」 地の底から響くような声で言われても、どこ吹く風である。 試着室を出てきたベルフラウを迎えたのはアリーゼの、 「ベルフラウ可愛い!」 のひとことだった。 「そう?」 と本人は苦笑気味だったが、まんざらでもない様子。 それはアリーゼと同様にセパレーツの水着で、こちらの色は白。ビキニと違い左右の胸 を別々に覆うのではなく、一連の布でクルリと胸部を取り巻く水着は、少女のスレンダー な肢体のラインを効果的な美線へと高めている。胸そのもののラインではなく、無駄な肉 のないベルフラウの全身のラインの美しさで勝負というわけだ。角度の強いアンダーも特 に恥ずかしいことはないらしく、堂々と伸びる長い足は、他の誰にもまね出来るものでは ない。おまけで被ったつば広の帽子など、早くも海の香りをその場に伝えてきそうな勢い だ。 ほう、と他の客たちが思わずため息をついてしまう。そのような姿だった。 「ざっとこんなもんだな」 「ええ……悪くないわ、ありがとう。これを買うことにするわ」 気に入ったのか、ベルフラウが微笑んで言うと、ナップは頬を掻いてはにかんだ。 「ま、お礼は浜辺のロマンスで結構だぜ?」 「調子に乗らない」 バン、とベルフラウも笑って指で鉄砲を撃つマネをする。おどける二人を横に、アリー ゼは自分が最後とウィルに彼のための水着を手渡した。 ――直後、ウィルの顔が凍りつく。 「……え?」 「ウィルくんいつも機能性とか言うし……あ、嫌だったら別に他のでも……」 「いや、着るよ」 首をすくめて言うアリーゼに、ウィルは決意の表情で試着室へと向かった。遊んでいて 水着を見逃したベルフラウたちが興味深く待っていると、 「……お待たせ」 「!?」 ベルフラウは顔を赤くして手で口を覆った。ウィルの水着は、最小限の布が股間を覆う だけの競泳用水着だったのだ。 ぴっちりとした布地が、ナップほどではないが逞しい引き締まった腰の下を申し訳程度 に隠している。見ようによっては全裸にも見えかねないそれは、まさに水の抵抗を限りな く減らした機能性重視の一品。人が本来持つラインのみを強烈に印象付ける、肌に張り付 かんばかりの性能美をかもし出す水着である。 キャー、という嬉しそうな女性客の悲鳴やら熱い視線を独り占めにし、人並み以上の美 少年は少し頬を染めて髪を掻き上げた。 「せ、せっかく選んでくれたんだし、か、買うよ」 「お前……男らしすぎる」 ナップはそうコメントし、うら若き乙女二人はどうしてもウィルの股間に吸い寄せられ てしまう視線を努力で外し、あははと大いに誤魔化しを含んだ笑いを浮かべるのだった。 続く